EDDYのFD3SジムカーナN車両製作記

エフ・ダイアリー
FDiary 2003
Volume 1

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J#02EDDY号

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お題目

2002.11.12 次期戦闘機、決定!

2002.11.17 ご契約

2002.12.07 ハチロクにさよなら

2002.12.13 FDにこんにちは

2002.12.14 ノーマルで走ろう その1

2002.12.23 ノーマルで走ろう その2

2002.12.28 歳末慣らしの旅 その1

2002.12.29 歳末慣らしの旅 その2

2003.01.04 1,000キロ点検

2003.01.11 駆動系強化 仕様確定編

2003.01.18 駆動系強化 作業完了編

2003.02.09 足回り強化 仕様確定編

2003.02.09 足回り強化 作業完了編

2003.02.10 時代はETC、なのか?

執筆終了(次のコラムへ)


2002.11.12 次期戦闘機、決定!

 色々と下調べをして、次期戦闘車両を何にするか考えた。最終的に候補に挙がっていたのはRX−7(FD3S)、S2000(AP1)、ランサーエボ6(CP9A)、ランサーエボ7(CT9A)、の4車種。この内、エボ6に関してはもう新車がないので競技車両か極上中古を狙い、あとの車種は新車から作ろうと思う。タイヤサイズの制限などからシルビア(S15)とMR2(SW20)は早々に戦線離脱、あとは次のような条件で機械的に決めた。1.ドライブが楽しいこと、2.ジムカーナに参戦するのに余計な苦労がないこと、3.参戦する以上は勝てること。
店頭を見て回るだけの時間的余裕が無く、インターネットを駆使して集められるだけの情報を集めていった。ここでくどくどと理由を論(あげつら)うつもりはないので結論だけ言う。決して全てにおいて完璧というわけではなかったが、上記の条件をバランス良く満たせるのはRX−7ただ一車種だけであった。
 新車とは言え、FD3S型のRX−7は2002年8月をもって既に生産を終えているため、ディーラーの店頭在庫しかタマがない。しかしある意味では運良く、さほど人気がない(欲しくても現実にはたいていの人が購入を踏み切れない)ようで、関東近辺のディーラーだけでも数十台がダブついていることが分かった。その内でお買い得なタマが2台ある。1台はアンフィニ藤沢南が所有している最終限定車スピリットRタイプA。色は賛否両論のチタニウムグレー。これは構内移動中に凹みを作ったとかで、通常の価格から30万円値引きされて3,698,000円。普通の人にとっては最初から2名乗車なのがネックになるのかも知れないが、どうせタイヤと工具しか積む予定のない俺にとっては何らデメリットもない。ケブラーを使った2座のレカロだけでも軽く50万円はするし、あとから換装しようと思ったらこれまた20万円は下らない17インチブレーキとステンメッシュホースも装着されているから、都合300万円。限定ではないバサーストRと変わらない値段で買える計算だ。もう1台は関東マツダが所有するバサーストR。つまり最終型で、唯一限定でないモデルである。ボディーカラーは黒。内装も別に取り立てて話題にするような特徴のないブラックファブリック。ホイールも16インチだし、ブレーキもそれに準じたサイズ。純正で車高調整式サスペンションとフォグランプが備わっていることが特徴といえば特徴だが、ジムカーナ走行をするに当たってはいずれも有利な条件には成り得ない。こう書くとまるで良いところ無しのように聞こえるかも知れない。だが9月に一度登録されており、恐らくそれが理由で標準価格より518,000円も安いという強烈な値引き。それにもう一つ、この黒いバサーストRを選ぶ理由が俺にはあった。
 このFD3S型のRX−7に関しては、カタログに記載された車両重量がかなりの正確性を持っていることは周知の事実だ。いくつかのショップやオーナーのレポートを見ても、いずれのモデルもガソリンを満タンにした状態で、ほぼカタログ上の数値に達することが分かる。最終型のバサーストRは1260kg、対してスピリットRタイプAは1280kg(注:後日、間違いであることが判明.正しくは1270kg)。この20kgという数字を信用するとして、ではこの違いはどこから来ているのか?レカロが純正シートより重い?−それはないだろう。純正シートは1座12.5kg。これは思いのほか優秀な数値だが、対するレカロはレールまで入れても12kg程度。元々2座のモデルの方が、リアシート部分についても軽いと考えるのが普通だ。前後左右のシートとカタログ上の重量差を合わせれば、バサーストRはこれ以外の部分で21kgくらい軽いことになる。ではフォグの付いている方が軽い?−それもあり得ない。左右のフォグランプを合わせてもせいぜい1kg前後だとは思うが、付いていない方が軽いに決まっている。ではビルシュタインが純正車高調より重いのか?−可能性がないとは言わないが、微々たる違いであろうことは想像に難くない。
 ホイールが17インチのBBS、これとタイヤで1輪当たり2kg、合計で約10kgだ。どうせ競技走行ではどちらのモデルでも17インチで戦う以外に選択肢はないから、戦闘力としては17インチモデルが劣る部分にはならない。21kg−10kgで残る11kgは?−これがつまり、ブレーキシステムの重量差だ。ストレートを5速全開でかっ飛んできてフルブレーキング、これを何周にも渡って続ける競技車両だったら俺も最初から17インチモデルを選んだだろう。だがメインカテゴリーはたった90秒のジムカーナだ。重量は少しでも軽い方が良い。ましてやそれがバネ下だったらなおさらだ。 − こうして、戦闘車両は16インチの6型FD3S、RX−7に決まった。

2002.11.17 ご契約

 車両を決めたその日に連絡をして、週末に黒のバサーストを見に行った。どうもこうもない、これしか選択肢はないのだから買わざるを得ないのだが、どうも8年間乗り続けたクルマとの違いにばかり目がいってしまう。まず、でかい、重い、ノーズが長い、剛性感がない、視界が悪い、ドライビングポジションが合わない ...。4型の中古車を試乗させてもらったが、これはミッションがだいぶ痛んでいて1・2速の入りが渋く、余計に印象の悪いものになってしまった。
 取り敢えず、見積書をもらって距離を置く。近くのファミレスに入って食事を摂りながら、本当にFDを買うべきなのか、もう一度考えた。自分は一体何をしたいのか、そこが起点だ。ジムカーナで走りたい、競いたい、競う以上は勝ちたい。ここまでは良い。充分に分かっているし、乗り換えの理由にもならない部分だ。N車両で参戦することの意味、意義。周囲に与える影響。後輪が駆動されなければいけないのか、新車でなくてはならないのか。それに300万円ものクルマを買って、それを維持して走り続けられるのか。今のマシンをもう一度N車両に作り直せないか。今のマシンで走れる場所、そこを走るだけではいけないのか。
 頭の中では様々な条件が複雑に絡み合い、回り混ざってぶつかっている。これから走り出す人達に、ドライビングを追求する楽しさを、FRレイアウトの実力を知ってもらいたい。自分が走ることで続く誰かが走るための道が開けるなら。出来れば今のうちにこれまでよりも速いクルマに乗りたい、乗っておきたい。暴れるクルマをねじ伏せるようなドライビングが出来るのも、もうこれで最後になるかも知れない。 − やはりFDしか、ない。
 ウェイトレスが注ぎに来た何度目かのコーヒーを飲み干し、先ほどの販売店に電話をする。提示された価格から考えてさほど交渉の余地はないだろうから、オーディオを付けてくれるよう、それだけを依頼する。しばらくして、携帯にOKの返事。
 販売店に戻り、契約書に判を突く。手付けを10万円渡して寒空の下へ出た。さあ、もう元には戻れない。もうこんな爆音ともお別れだ、と思いながら夜の街を抜ける。ひらひらと軽いボディーは今日も自分の手の中にある。なぜだかこんな日に限って、ハチロクは絶好調だった。

2002.12.07 ハチロクにさよなら

 俺のハチロクを買ってくれたのは、とある自動車工場のオーナー。パワトレ常連の某氏の、学生時代の先輩だ。彼の強い勧めで購入を決めてくれたのだそうだ。こういう時、走りを通して知り合った人達の親切が本当にありがたいと思う。そのお礼の気持ちを込めて、こちらから東京は東大和市にある先方の工場まで納車に行く。一緒に買ってくれたパーツの山は、ハチロクに全て積むことが出来ず、サポートカーまで出動させての大移動だ。当日は生憎の雨、しかも無料のルート検索サービスで調べた道は大渋滞。やっとの思いで到着したときには既に約束の時間を3時間も過ぎていた。おまけに今年に限って自動車税を滞納しており、納税証明書がない。せっかく買ってくれた人に多大なる迷惑を掛けてしまった。せめてこのクルマが、新しいオーナーの気に入ってくれれば、と祈るような気持ちで工場を後にした。

2002.12.13 FDにこんにちは

 契約からほぼ一ヶ月、いよいよ納車の日だ。早朝から仕事をしてやっつけ、午後から販売店へ向かう。荻窪駅からは歩いても10分程度、だが電車の乗り継ぎが悪く、思いのほか引き取りが遅くなってしまった。
 販売店から保険会社に電話をして、車両の切り替えをしてもらう。切り替えそのものは電話一本でOK、だが何かあったときに動いてもらうためには車検証のコピーが必要だという。販売店に頼んでその場でFAXしてもらい、手続き完了。これまでは入りたくても入れなかった車両保険も付帯して、保険料は25000円から20万円へと跳ね上がった。車両保険さえ掛けなければせいぜい5〜6万円で済んだ話だが、FDはランサーやRV車・高級車と並んで盗難の多い車種だから、これを省くわけにもいかない。この時点で年間のランニングコストは175000円増。先が思いやられる。
 登録を終えて受け取った新EDDY号の累積距離計は105km。まずはこれから慣らしをしなくてはならない。出てすぐの赤信号を待ち、環状8号線を外回りに入る。隙があれば正圧に飛び込もうとするブースト計の針を睨みながら、慎重にセブンを走らせる。3000回転を上限にシフトしていくが、低速トルクはハチロク以下だ。ミッションの入りも絶望的なまでに悪く、それでも、いや、だからこそなおさら、今日の内に距離を稼いでそこそこまで慣らしをしておきたい。谷原から関越道に乗る。ギア回りがノーマルのままなので、3000回転とは言っても5速に入れば100km/h程度は出てしまう。ギアを痛めたくないから出来るだけバックトルクを掛けないように気を付ける。そのために減速はブレーキか空走、加速時と巡航時以外はクラッチを切る、という不自然な操作を強いられる。しかしタイヤ幅の影響もあるのだろうか、轍(わだち)で大きくステアが取られる。極端にシビアだ。不安定と言っても良い。280馬力に対応しているためか、ミッションのフィーリングも渋くて重い。5速に入れるのに3秒くらい掛かる。冗談でも大袈裟でもなく、5速側へのセレクト(変速操作は前後がシフト/左右はセレクトと言う)が本当に重くて「よっこら、しょ!」という感じなのだ。これはスポーツ走行時に2>3速で誤って5速に入らないように配慮されているものだろう。そういう意味では良く考えられた機構なのかも知れないが、慣れるまでは大変そうだ。つまり気を抜いたら4>3速とシフトしてしまうことになるからだ。そんなこんなで精神的・肉体的な緊張が激しくて、ガスの補給を兼ねて立ち寄った三芳PAでは、既に肩が凝ってガチガチだ。ステアリングのチルト・テレスコピック機構もないし、シートの前後スライドとシートバックの角度調整で合わせるしかないわけだが、こんなに疲れるドライビングポジションのクルマも珍しいと思う。スタンドでは豪快に56リッターのガスを飲み込んだ。6600円。自動車の運転免許を取って早15年。一回でこんな金額のガソリン代を支払ったのは初めてだ。
 鶴ヶ島JCTから圏央道へ入って南下する。本線に入ってゆっくりと加速していくと、ふとあることに気付く。速度が乗れば乗るほど挙動が安定する。当然、超高速域ではそんなことはあり得ないだろうが、3000回転縛りで出せる程度の速度域では明らかに速い方が運転が楽だ。その点において、ハチロクと全く同じ気配、というか「匂い」がする。最初は回転数感応式のパワステのせいで錯覚しているのかとも思ったが、どうやらシャシーや足回りを含めた総合的な「乗り味」がそうなのであって、競技車両としての性格は似ているかも知れない。そういう意味では同じように乗れる可能性がある、と感じて少し安心した。
 入間からR16へ降りて更に南下。八王子バイパスを経由して相模原へ。一般道が少し混んでいて、思ったよりも走行距離が伸びない。が、今日中にオイルを替えておきたいのでそちらを優先して上鶴間のアンフィニへ。エンジンオイルとミッションオイルを交換してもらう間にブッシュ周りやデフについて相談をする。現時点ではどうやらマツダスピードが宙に浮いた状態になっているらしく、デフや強化PPFなどの手配がスムーズにいくかどうか、疑わしいとのこと。取り敢えずマツダのディーラーグループ内で在庫している分を当たってもらうと、いずれも十数台分が確保されているようで実際には問題はなさそう。デフの効きを3段階に調整できるという「セレクティブデフ」に興味を示しつつ、まずはカタログをゲットした。ブッシュは車両規定で材質の変更が出来ないので、最初から全部強化ゴムにしてしまおうと思ってその通りに伝える。すると何やらサービスマンの方が狼狽(うろた)えている。このディーラーでは新車を買ってすぐに全ブッシュ交換、という客が珍しいのかも知れない、と思いながらコーヒーをすすっていた。5分後に出された見積書を見てぶっ飛んだ。工賃込み・税別で合計358,000円。おいおい、その調子でいったらたかがN車両ごときを作るのに車両本体とは別に200万円くらい掛かるんじゃないのか?
 そうこうしている内にオイル交換作業が終わった。エンジンオイルはマツダ純正10W−30のSLグレードで4L2,500円、フィルターが1,200円。ミッションオイルは75W−90GL5で2L1,600円。工賃はいずれも500円。税込み合計で6,615円、これは安い。将来的にスポーツ走行をしても純正オイルで問題ないとすれば、燃費の悪さで増加したガソリン代を相殺してくれることになる。何でもサービスマンの話によれば、全国のマツダディーラーの中で最も安い価格設定だそうで、遠くないほかのマツダディーラーで車を買った人もオイル交換のためだけに訪れるくらいだと言う。これは嬉しい。何せ、ここは俺の自宅から歩いて3分のところなのだ。累積走行距離は328kmであった。

2002.12.14 ノーマルで走ろう その1

 今日はミニのにしちゃんに誘ってもらった「扇島クラブ」の同窓走行会。納車の翌日という、実におバカなスケジュールだが、とにかく早く走らせてみたくて二つ返事で参加を決めた。「扇島クラブ」は伝説のドライバー遠藤選手を中心として、パイロンキングの異名を持つ壷坂選手やラリーで有名な碓井りか選手など、有名どころが集まったグループだ。
 会場は関越スポーツランドで、俺は相変わらず相性が悪い。これは走る上での相性ではなくて、会場に着くまでの時点で既に問題なのだ。今回もどうも運が悪いのか、それとも元々から俺の時間の読みが甘いのか、途中でことごとく渋滞のようなものに引っかかり、受付時刻を1時間も過ぎて到着するという大遅刻。第一、下道の長い筑波サーキットですら都内に入ってから1時間半で着けるのに、高速道路でたかが100km&IC降りて目の前の関越までに、なぜ3時間も掛かるのかが分からない。主催者の方々はもとより、誘ってくれたにしちゃんにも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 もうほとんどの参加者は走行準備を終えており、コース上ではパイロン位置の確認のためにオフィシャルのMR2が走行を繰り返している。こちらも準備をしなくては、と慌てて荷物を降ろし始める。ブルーシートを敷いて荷物を置き、椅子を出してマットを外して ...ゼッケンを貼ったらもう準備は終わりだった。交換するタイヤもないし、セッティングできる調整箇所もない。ジムカーナパッドは一応用意していたが、ノーマルタイヤでは特に必要性も感じないのでそのまま。何だか拍子抜けするほどのあっけなさにやや戸惑いながらコースへ向かう。
コース設定はやや大雑把で、さほどシビアなマシンコントロールは必要としない。ただGが掛かったままのコーナリングではノーマルサス&ノーマルタイヤの苦しさを存分に味わうことが出来そうだ。サイドターンが必要な部分は2箇所。左180度と右90度ターンだから様子を見るにはちょうど良い。路面温度は17度。この時期にしてはまあまあの温度だが、スタートするA車を見ていると多めのホイールスピンに悩まされている。
 スタート直後からリアジャダーが凄い。明らかにデフが暴れていてまるで加速感がない。全開からやや戻したところで我慢すればジャダーも止まることを発見したが、それだと1速ではフルブーストにならない。ブレーキはそこそこにコントローラブル。ただしこれはタイヤもサスもノーマル、という条件下にあるからであろう。この組み合わせであればサイドもちゃんと効く。旋回速度そのものは緩慢だが立ち上がりのトラクションもさほど悪くはない。「フロントミッドシップ」の触れ込みの通り、フロントの回頭性は異常に良い。これまで乗っていたマシンのように、何らかのアクションでフロントの舵が効く状態を作る必要が全くない。のは良いのだが、このようなジムカーナ走行ではノーマルサスはさすがに力不足で、舵を入れた次の瞬間にグニョンと大きくロールする。と同時にリアの荷重が抜けて即座にドリフト状態に入ってしまうから乗っていて実に怖い。グリップして粘る、という領域がほとんど無いのだ。動きそのものは悪くなく、4輪が流れたままでもドライバーの制御を外れることはまずないが、パワーに任せて短い距離でも車速が乗るし、いかんせん車重が大きいためにそのままアウト側にはらんでいきそうに感じさせる。そのせいでコーナーの度に冷や冷やする。出来るだけ加速区間を長く取るように、脱出から踏んで行ければもっとタイム的には縮まるのだろうが、どうしてもNAの癖が抜けなくて、コーナリング中の姿勢制御にはステアリングに加えてアクセルも併用してしまう。その結果、立ち上がりでちょうどブーストが落ちてしまうことが何度もあった。ステアリングはNARDI製の3本スポークで中央にエアバッグを備えたもの。街乗りでは感じなかったがジムカーナ走行では素早い切り返しの場面でやや重さが気になる。これまでのマシンと比べるとステアリングインフォメーションも不足気味。どうせポジションを合わせるのにボススペーサーも併用する必要が生じるだろうから、これは使い慣れたものに替えてしまおうと思う。シートは全く使い物にならない。4点式のハーネスすらも付けていないので装備としては最も競技走行に適さない状態であることは間違いないが、例えそうだとしても300万円のスポーツカーとしてはいかにもお粗末。嫌も応も無しに替えざるを得ない。
 午後からはコース変更。今度は前半に外回り一周半、後半には大きくオフセットされたスラローム&8の字&270度セクションが用意されている。外回りは右コーナーだったが、足もタイヤもノーマルのためか、心配されたブローバイの噴出はなかった。コーナリングに入るとどうしてもリアの接地圧が不足するようで、どこでもかしこでもドリフト状態。当初はそれが収まるまでアクセルを開けられないものと思って待っていたが、ここは一つ試してみようとコーナークリップから開けてみた。すると荷重は綺麗にリアに移ってそのままフル加速に入れる。シャシーからのインフォメーションを一部無視する形になるのでかなりの慣れが必要と思われるが、乗り方のバリエーションの一つとして記憶しておくことにする。車種が違うこととクロモリフライホイール+クロスミッションからの乗り換えという相乗効果で、シフトはほとんど上手くいかない。フライホイールやクラッチ周りのイナーシャが大きすぎることと、シフトダウンするときの回転差が大きいこと、それに慣らし中とは言えあまりにも渋いシフトフィーリング、更にペダルレイアウトの悪さが原因で、ヒール&トーの成功率が極端に低い。1速へのシフトが終わった頃には既にブレーキングも終了しており、まるで関係のないタイミングでクラッチミートする羽目になる。4輪のブレーキシステムに装着されたABSは良くできていて、コーナリングの途中でわざとハードに踏み込んでもほとんどラインを乱すことなく車速を落とす。しかし止まる直前まで速度を落としてサイドブレーキを当てるようなシーンではドライバーの意志とは関係なくブレーキをリリースしてしまうことがあり、ことC地区(関東エリア)で一般的なパイロンジムカーナで走らせようと思ったときにはやはり解除せざるを得ないと感じる。最終的なブレーキセッティングはタイヤを決めて足を組み、ABSを解除した上で、ということになるだろう。純正の強化トルセンデフは大きなトルク差があるときにはそこそこの効きを示す。1速でテールスライドを維持するような場面では機械式と変わらず有効に機能する。ところが2速以上のコーナリングではコトコトとON/OFFする音が聞こえ、効きも強くは感じない。同じ滑るにしてもLSDの効きが変化してリアタイヤが彷徨っているような感覚よりは、タイヤをベッタリと接地したままズルズルとトルクで引きずってゆく方が俺のイメージには合っている。これはパーシャル域を多用しすぎる俺の踏み方にも問題があるのかも知れないが、感触としてはやや心許ない印象だ。
 またしても今日中にオイル交換を済ませたいので、走行時間枠が終了する前に撤収。遠藤選手や壷坂選手、にしちゃんと山口さん達に挨拶をして早退させてもらった。関越スポーツランドは出るとすぐに吉井のIC。なのだがここでは高速に乗らず、一般道を流しながら車を購入した販売店に電話をする。近くのディーラーを教えてもらうためだ。川越市内に入ったところに1店舗あり、そこでエンジン・ミッション・デフのオイル交換作業を予約する。
 川越街道を夕方のラッシュに巻かれながら走行していてふと気付く。クルマが左に寄りたがっている。握る手を緩めると、ステアリングがスッと左に切れ込んでしまう。当然、その通りにクルマも曲がっていく。どこでやっても、何度やっても同じ。原因は明らかに路面ではない。納車早々、アームでも曲がったか、それともただ単に調整ボルトが緩んだだけなのか。いずれにしても、現在のシャシーはこのクルマの一生の中で最も良い状態であるはず。それでこの有様だから始末が悪い。では補強無しでアシを組んでSタイヤを履いたらどうなるのだろうか?アームなど根本から折れてしまうのではなかろうか。
 そんなこんなで、やや憂鬱な気分に浸りながらディーラーに到着。作業を待つ間、ショールームのイスにどっかと座り、無言で「コーヒーを出せ」のオーラを放ってみる。・・・出た(笑)。足回りの不具合に付いては敢えて何も言わずにおいた。こんなところで直すのに何時間も待たされて、結果が芳しくなかったら戻る気にはならないし、まさかの入院などということになったら目も当てられない。やがてオイル交換終了。ピットで抜いたオイルを見たのだろう、作業が終了して支払いをする時、サービスマンが俺に尋ねる。「今日はたくさん走られたんですか」...バレてるよ。
 ミッションオイルを新品に替えるたびにシフトフィーリングは劇的に良くなる。ところがしばらく走っていると、これが見る見る悪くなる。距離にして10km程度だ。それだけミッション内部のフリクションが大きいのか、はたまたオイル自体の性能が悪いのか。これは今まで使っていた銘柄を一度入れてみて、様子を見てみることにしよう。今日までの累積走行距離は668km。

2002.12.23 ノーマルで走ろう その2

 今日はいつもお世話になっているクレバーレーシングのジムカーナフェスタ。JAF公認ジムカーナの「クレバージムカーナ」シリーズと草ジムカーナの「BPスーパートライアル」シリーズそれぞれの上位陣を招待し、一堂に会して戦う年に一回の競技会だ。ジェニファーからはいつも通りYOUとEDDY、それに常連のKANEが参戦。俺はステアリングと4点ハーネス、それにリアブレーキパッドのみを装着して戦いに挑む。タイヤと足がノーマルなので、クラスはライセンス無し・後輪駆動・Sタイヤ無し、の「FR−NT」。クレバーレーシング主催のイベントでは、競技走行前に練習(慣熟走行1本ではなく、たいていは3本くらい)が付いている。まだこのクルマの走らせ方がちっとも分かっていない俺にとっては嬉しい限りだ。ここ筑波サーキットジムカーナ場の路面は関東周辺の会場の中では比較的安定してグリップする。とは言え、今朝の路面温度は10度に満たない。コースもこの会場らしく、タイトなコーナーを繰り返す設定。グリップしないところで頑張っても何の得もないから、出来るだけコーナリングを小さくまとめて直線加速で稼いだ方がタイムは出そうだ。奥のスペースにはかなりの余裕があるが、手前の6本パイロンとガードレールとの間隔は設定ミスかと疑うほどに狭い。わずかに7〜8Mしかなく、ライン取りの自由度は低い。
 今日の練習走行は5本。最初の走行では光電管が動作せずタイム不明。2本目は1分05秒台である。いずれもこれまでの乗り方のまま、ライン取りもそのまま走った結果。周囲のライバルもほぼ前後1秒程度以内に収まっているから、取り敢えずはそこそこのタイムなのだろう。路面温度もやや上がって14度となった3本目。今度は3秒台後半に入った。Sタイヤを装着したクラスでは、速いクルマで2秒台に入っている。4本目は乗り方を変えて明確に直線加速を狙っていった。2秒76。まあまあだ。ゴール直前に設けられたスラロームセクションでのオーバーアクションがなければあと1秒くらいは行けそう。ABSの動作を嫌ってサイドを引くときにはフットブレーキを先にリリースのちょっと手前まで緩めて我慢することにして、これは上手くいっている。だが、リアのみメタルパッドを入れたせいでサイドの効きが強烈すぎる。効かないよりはまだマシだが、旋回角の制御が今ひとつで立ち上がりのロスが大きい。5本目で1秒58。続けて走るとタイヤも暖まってくるから、この時期なら確実にタイムアップするのだ。今のところ、クラストップ。リアパッドのみのノーマルカーとしては上々だ。Sタイヤ装着クラス(簡単に言えばA車両)のトップは58秒台に入った。
 競技走行1本目、前半はそこそこの出来。だが6本パイロンを回るところがどうも今ひとつ乗り切れない。シートのホールドがあまりにも甘くて、Gの掛かり続けるセクションではほとんどステアリングに身体がぶら下がっている状態。まともにドライビングできないのだ。更にスラロームに向かう手前ではシフトに失敗。ドライバーは正しいタイミングで操作しているのだが、いかんせんミッションが渋くて1速に入らない。それに伴ってサイドも遅れ、パイロンを遙かに通り過ぎてからの旋回となってしまった。そのせいでスラロームへも1速では届かず、かといって2速に入れるほどの距離もなく空走。2秒74で暫定3位。KANEは3秒23。YOUは2秒39で暫定2位。ラストゼッケンのS15が2秒02で暫定1位。トップまでコンマ7秒。
 1本目でミスしたところが分かっているから、それさえ対処できれば次は確実にタイムが上がる。問題は路面状況が悪化する分を相殺して、どの程度上がるかだ。ところが予想以上にグリップせず、スタートで痛恨のミス。路面温度が思いのほか下がっていたようで、軽く繋いだつもりが激しいホイールスピンに見舞われた。お陰で数少ない直線加速のセクションなのにアクセルを戻す羽目になった。トルクに任せて早めに2速へ入れつつ、「その上シフトミスをするよりは」と思ってサイドの引き方を頭の中で修正。これだけグリップしなくなっているならサイドターンのセクションも1本目より丁寧かつ繊細に行く必要がある。どうせアシもノーマルだから、いざ効かなきゃベタで踏んでいってもさほどのロスにはならない。このクルマでのサンプル数(練習量)がまだ圧倒的に少ないから、尻センサーの感度を最大に上げてチョン引きサイドを連発。6本パイロンの途中やスラロームの進入でもサイドを当てていく。これはそれなりに成功し、2本目は2秒29へとコンマ45秒ジャンプアップしたが届かず。YOUを抜いて暫定2位。それでも練習走行のベストからコンマ7秒落ちだ。KANEは3秒53とタイムダウン。YOUはフロントの足回りセッティングミスを解消してタイムアップ。俺のタイムをわずかに100分の1秒塗り替えて2秒28。ラストゼッケンのS15が1本目のタイムでクラストップとなった。
 FD3Sに乗り換えて初の公認競技会は残念ながらデビューウィンならず。クラス3位に留まった。だが今日の走行で次のようなことが分かったのは収穫だった。その1.FDのパワーは凄い。走行距離がまだ1000kmに満たず、いわゆる「マツダリミッター」が解除されていない状態であったが、それでも今回の参加車中で最も良い加速ではなかろうか。その2.更にシャシーを含めた足回りのジオメトリも高いレベルにある。特にリアのトラクションはFR車ではダントツだろう。ハチロクならその場で回ってしまうくらい踏んでも前に出る。その3.やっぱり重い。N3クラスを走る分には各車とも最低重量の制限があるから問題にはならないだろうが、クローズドなどで規定違いの車両と混走するとかなりの苦戦を強いられそうだ。その4.とは言え、ブレーキは良い。ゴムホースの嫌な感触は当然のように伝わってくるし、ABSそのままでリアのみメタル、というイレギュラーなセッティングだったが、これまで乗った全てのハチロク(俺が所有していたものを除く)よりも遙かに良い。
 そうだ、忘れない内に書いておこう。もし貴方が、今乗っているよりも大出力のパワーユニットを持つ車種へ乗り換えようと考えているなら、次のことを覚えておいて損はない。例えばハチロクからFDに乗り換えるということは、(かつての初代レビン(TE27)や初代GTR(KGC10)がそうだったように)エンジンだけを載せ替えてパワーを上げる方法とは根本的に違う。出力の増大に伴って、タイヤもブレーキもそれらを収めるボディーも、全てが大きく重くなる。それが何を意味するか。重くなったボディーは、加速以外の全て − 減速でもコーナリングでも、基本的には不利になるのだ。しかしこのままではユーザーが困り、ひいては作ったメーカーも困ってしまうから、当然タイヤもブレーキも出力に見合ったものが装備されている。それに新しい設計のシャシーや足回りによっても走行性能は押し上げられているから、結果的にタイムは良くなる。だが、重たいボディーの基本的特性は著しく爽快感や一体感をスポイルする。つまり、気持ち良くない。そういう代償を払っても乗り換える価値があるかどうか、十分に検討すべきだ。とは言え、130〜140馬力のパワーでは出来ない乗り方、出来ない練習が可能になることも事実ではあるが。本日までの走行距離、950km。

2002.12.28 歳末慣らしの旅 その1

 二度もジムカーナ走行をしておいて今さらという気もするのだが、慣らしを兼ねて久々に遠出をした。当初は飛騨高山までロングドライブでもしようと思っていたが、街乗り用16インチホイールとスタッドレスタイヤの入手に失敗したため予定を変更、伊豆半島を一周することにした。普段の様子よりも微妙に台数の多い東名高速を西へ向かう。まだ帰省ラッシュが本格的に始まるまでに数時間はあるから混んでいる状態とは言えない。だがサンデードライバー改め盆暮れ正月ドライバーが大量に流れ込んできているので走行車線のペースは上がらない。ジャンボ(大型トラック)の連中も軒並みイライラしているのが分かる。俺のFDはもうあと一ヶ月もしない内にファイナルを変更されてジムカーナ用のギアリングに改造される。今の内だけ、と思って頻繁に追い越し車線に出て、ノーマルギア比の恩恵にあずかる。高速走行を楽しんだ。
 沼津IC付近の渋滞を嫌って、厚木から小田原厚木道路に入る。車線は東名より少なく2車線。しかし走行台数そのものが少ないからこちらの方が快適だ。オービスは無いが覆面パトカーが出没することが知られているから、そのせいかも知れない。またもや追い越し車線を単独でひた走り、あっという間に小田原東ICに到達した。年末年始を温泉で過ごそう、というキャッチコピーをどこかで見たか見なかったか、来てみれば出口で大渋滞。それも伊豆箱根方面が酷い。2車線を走ってきた車が全て1車線に集まってくるから見る見る内に渋滞は伸び、通過するのに軽く30分程度は掛かりそうな雰囲気だ。
 あまり渋滞に付き合っていると目的地までご一緒する羽目になりそうなので戦線を離脱。西湘バイパスを東へ向かう。最初のICで降りてUターン、15分程度でまた元の場所に帰ってきた。合流地点は混んでいることが分かっているからそちらへは向かわずに早川ICで降りる。連絡路を回って真鶴BPへ。ほとんどの車が新道の方へ入っていくようで、ここでもちょっと詰まる。それを避けて旧道へ入り、湯河原。ここからが凄い。旧道の出口から新道との合流地点までのわずか1kmを進むのに20分。平均時速3km。これが全部熱海方面へと向かうわけだ。
 こりゃ堪らん、というので裏道に入る。湯河原の駅前を抜けて椿ラインへ。昔、YOUと二人で夜な夜な通った道だ。ほかに登っている車もなく、下ってくるクルマともすれ違わない。勝手気ままな独り旅、といった風情で、別に攻めるでもなく攻めないでもなく、楽なペースで峠を登る。あの頃、4AGカリーナでどんなに頑張って登ってもシルビアやFC3Sに勝てなかった理由(わけ)が、今はっきりと分かった。これはまるで別の乗り物だ。ハチロクに比べれば重い車重、相対的にプアなタイヤのせいでコーナリングでは無理できない。それが分かっているから自ずと突っ込みも姿勢重視で安定方向になる。結果、出口が見えたらスライドをステアでいなしつつ全開。ハイパワーのお陰で短い加速区間でも車速は伸びる。中間の短いストレートでは昔に走っていたときのトップスピードを軽く12km/hも上回った。後輪駆動に有利な登り坂ではトラクションを失うこともないからテンポ良く走れる。本領発揮。タイムを計ったわけではないが、間違いなくこれまでのベストラップを刻みつつ大観山のパーキングへと到達した。タイヤはちょうど溶けかかる程度であったが、ブレーキはほぼ限界。忘れていた匂いが鼻腔をツンと刺激する。ノーマルとしては余裕があるとは言え、このパッドはやはり街乗り用にしか使えないだろう。
 午後の良い時間。山頂付近は路肩に凍った雪が残り、気温も低い。防寒具を着けてもさほど長くは車外に居られない。だが空気はとても澄んでおり、富士がくっきりと綺麗に見える。何度も来ている場所なのに、買ったばかりのクルマなのに、もうこのクルマでここに来ることは二度と無いような気がする。考えてみたら先日まで乗っていたハチロクでも、ここに来たことは一度しかなかった。年に35週も競技会/練習会の予定を入れているからか。
 富士とセブンをフレームに収め、シャッターを切る。今使っているミノルタのS304はフィルター径が特殊で、日本には装着できるPLがないので露出に苦労する。低く斜めに差している陽光が、雲に隠れてやや翳った瞬間を狙って撮った一枚が冒頭の写真だ。
 このままR1を下って三島へ抜けようと思っていたが、気温からして路面が凍り始める気配があったので路線変更。函南から熱海へ降りる。結局、熱海ビーチラインを大幅に迂回しただけで時間的には渋滞に巻かれていたのとさほど変わらないだろう。だが排気ガスと富士では大違い。渋滞して20分と迂回して30分なら、俺は後者を選ぶ。もちろん時間が許せば、の話。
熱海まではイスズのビッグホーンが先導車のように前を走る。俺はこの手の車種に乗っている人の、少なくとも一般道での運転技術を信用していない。車重も重く、重心も高いその車で、俺のFDよりも遙かに辛い突っ込みを繰り返す。当然ブレーキランプ点きっぱなしで、消えている時間の方が短いくらい。こういう車が後ろに着くと怖いが、俺の前を走っている分にはどうせブレーキがいかれても真っ直ぐに路肩へ突っ込むだけだ。俺には影響がないので勝手にやらせておく。と思っていたら運良く軽トラックがその前に入ってきた。ビッグホーンはしばらく煽りをくれていたが、軽トラの方は気にしない様子。というか、ただ単に限界だっただけかも知れないが。
 熱海を抜ければR135も2車線になるから渋滞は解消する。大半は渋滞のペースから抜けきれないのか、それとも右車線が右折レーンになると思っているのか、左の車線を数珠繋ぎにトロトロと進んでいる。俺のほかにはなぜか高級車しか居ない右車線を快調にひた走る。伊東まではもうすぐ。予約して置いた宿も難なく見付かり、本日は運行終了。累積走行距離は1,172km。

2002.12.29 歳末慣らしの旅 その2

 朝9時、チェックアウトの時刻を待たずに宿を出る。昨日の渋滞を作っていた車達が、熱海から流れてくる前に移動しておきたいからだ。このホテルは「海から歩いて何分」などという生易しいものではなく、直接海に面している。そこにクルマを停めておいたせいで、ボディーと言わずガラスと言わず塩でベタベタになっていた。下手に濡らすと錆を誘発するから、フロントガラスだけを拭き上げてクルマを出す。冬の日差しに鋭く輝く水面を見ながらR135を南下する。狭くて路面の悪い市街路では何ら良いところを見出せないRX−7だが、こういうワインディングでは実に心地よい走り。無茶にペースを上げて突っ込まなければフロントが逃げることはまずないと言える。
 途中、一般道に設けられた小さなPAでブレーキパッドを交換することにした。ここまでリアにだけジムカーナパッドを入れて走っていたが、さすがに前後の制動力の差が大きすぎて気になるし、ほとんどリアのみで減速しているのがありありと分かったからだ。このまま走り続けたら、きっとリアのパッドだけが先に無くなってしまうに違いない。リアはメタルでフロントよりも高価なのだ。ジャッキを当てて車体を上げていく。タイヤが地面から離れる瞬間、ハンドルを回す手に違和感。どっしりと車重が掛かる感覚が薄い。と思った次の瞬間、ブレーキダクト付近からバキバキと異音が。慌てて降ろし、ジャッキを当てていた部分をのぞき込む。うっすらと凹んでいる。やってしまったか、ジャッキポイントをわずかにずれたのかも知れない。ジャッキを当て直す。やっぱり感触がおかしいが、気にせずに作業を進める。純正にしては軽いとは言え、ハチロクのTE37と比較すれば格段に重いホイールを外して左フロントキャリパにアクセス。対向ピストンのキャリパをいじるのは初めてだったので、作業の前にしばらく観察した。片持ちキャリパなら下側のボルトを抜いてキャリパそのものを跳ね上げることでパッドが外れるのだが、これはどうもそうではないらしい。とりあえず裏側のボルトを上下とも抜いてキャリパを外してみた。パッドが取れない。良く見るとキャリパにピン2本とスプリング3本で固定されていて、キャリパを外しても一体のまま取れてくるだけだった。おもむろにバネを外してピンを抜く。それで簡単にパッドが抜けた。ここでの学習を活かして、右側ではいきなりバネを取り除く。ピンを抜いたらもうパッドは外れてきた。これは楽ちんだ。使わなくなるパッドをテコの要領で使い、ピストンを押し戻してジムカーナパッドを入れる。押された圧力で反対側のピストンが飛び出してくるからこちらのパッドも先に抜いてはいけない。反対側もテコで押してピストンを沈め、新品を挿入。バネを通しながらピンを入れ、バネのノッチをキャリパに引っ掛けて交換完了。慣れれば片側5分も掛からずに終わるだろう。
 しばし青空ガレージを楽しんだ後、稲取を抜けて下田へ。下田は古くからの漁港だ。国道から北側は西武と東急に開発された土地で、それなりに新しい建物がひしめいている。南へ折れて狭い路地を進んでいくと、大昔には漁師の家だったであろう店が建ち並ぶ。もしも下田で貴方が自分のために飯を喰うのなら、断然こちらの漁師町の方がお薦めだ。特にこの季節は脂がのっていて魚が旨い。昼食に金目鯛の味噌焼きを堪能し、更に南下。下賀茂から国道を外れて伊豆最南端の石廊崎へ。ここは駐車場から岬の突端まで、徒歩でしか行けない。運動不足で悲鳴を上げる筋肉と心臓に鞭打って、太平洋を眺めに行く。
 R135に戻り、西伊豆方面へ。松崎に入ったところで日が沈み始めた。海沿いの防波堤に出て、しばし休憩。夕日を眺める。冬の澄んだ空に、橙色に輝く夕日が綺麗だ。黒いボディーに似合うかと思い、ここでも写真を撮る。しかし黒は難しい。映り込みが激しくて綺麗に面が整わない。どうしても付近にある関係のないものが、大量にボディーに反射したまま撮れてしまう。
宿に電話を入れて到着の予告をする。今日は小金崎に投宿だ。大小さまざまなトンネルを抜けてワインディングを行く。一般的にトンネルの中と外では、舗装の状態も濡れ具合も路面の温度も違う。ブッシュもアシもノーマルのMYセブンだが、その手のインフォメーションはちゃんと伝わってくる。もちろん、ピロ+ウレタン仕様だったハチロクの比ではないが、充分に合格レベルと言えよう。そうしていくつかトンネルを抜けるともう小金崎。海からの強い風に追われるように宿に駆け込んで今日の走行を終えた。
 翌日はやや雲の多い空。帰省ラッシュが本格的に始まると上りも下りも関係なく主要な交差点やICが麻痺してしまう恐れがあるので、今日は早めに帰途に着こう。当初は西伊豆周りを計画していたが、どうしても海沿いの道は混雑気味になるのでルートを変更。土肥からR136を辿って修善寺へ向かう。登りのワインディングに差し掛かったところで、前を走るBMW535がスッと道を譲ってくれた。あちらはのんびり走るつもりなのだろう。躊躇無く前に出てハザードを焚く。ここは路面も良いし道幅も広く、タイトなコーナーはほとんど左だから安心だ。リズムに乗ってコーナーをたぐり寄せてゆく。次第にペースを上げていくと、ノーズダイブによる初期オーバーが顔を出す。ここは登りだからまだ良いようなものの、下りだったらかなり神経質にならざるを得ない特性だ。とは言え、リアのストロークが足りないわけではないのでスッポ抜けて飛んでいくことはない。あくまでも接地感が薄れて強く回り込もうとするだけだ。後で聞いた話だが、17インチ仕様ではあまり気にならない現象らしい。このクルマはリアタイヤの幅が広い状態が標準だと思えばいいのかも知れない。
 修善寺からはパイパスで一気に三島へ。R1を曲がらずに市街地を抜け、R246に入ればやがて裾野ICだ。帰りの東名はやはり微妙に車が多い。走行車線を走るペースが皆まちまちなので、またもや追い越し車線をメインにして走る。途中、秦野の手前でペースの遅いS2000に引っ掛かる。何気なくペースの違いをアピールしていたら避けてくれた。かと思ったら直後に入ってきて煽り始めた。やれやれ、と思いながらこちらもペースを上げる。アクセルを踏み込んでほんの数秒後、ガクッと減速Gを感じて慌ててペダルを緩める。見ればメーターの針はもう1●0km/hを指している。リミッターに当たってしまった。仕方ないのでその速度を維持したまま走る。後ろのS2000も全く同じペースで着いてくる。どうも気配からすると向こうはリミッターを切ってあるようだ。このままずっと追走されるようなら先に行かせようかと考えていたのだが、しばらくしたら向こうが走行車線に戻った。全く同じ速度での走行に飽きたのか、オープンでその速度域は辛いのか、もしくは助手席の女性からクレームが付いたのかも知れない。俺はそのままペースを維持して横浜町田ICを降りた。ワインディングでの走りの気持ち良さを思い出すと、ジムカーナ仕様に仕立てるのが何だかもったいなくなる、そんなツーリングであった。累積距離は1,423km。

2003.01.04 1,000キロ点検

 走行距離が1000kmを超えたので、マツダでまたオイル交換。エンジンオイル、オイルフィルターにミッションオイル。と同時に1000km無料点検も行った。無料点検の内容は主に油と水のチェック、足回りボルトの緩みチェック。関越の帰りから気になっていたステアリングから手を離すと左に旋回する問題も伝えた。
 作業には40分程度が必要、というので、食事をしてから2時間後に引き取りに行った。1000キロ点検は問題なし。旋回の原因は当然足回りで、左フロントがトーアウトになっていた。これもサイドスリップテスターで基準値に修正してもらった。結果は自宅までのわずか500Mでも違いが分かる。フロントがどっしりと接地している感触で、心なしかステアリングも重い。まだ微妙に左に取られるが、レベルの差は明確だ。プレデビュー戦として走った12月23日、この不具合がなかったら勝てたかも知れないと思うと悔しい。それにしてもあんなジムカーナ練習会を一日走っただけで足回りが狂ってしまうような造りで競技走行を続けて大丈夫なのか。それともこれは新車であるが故のご愛敬なのだろうか。ここまでの累積走行距離1,457km。。

2003.01.11 駆動系強化 仕様確定編

 納車から約一ヶ月。今日はRIGIDブランドでも有名なアルファにFDを預ける。マイセブン初の工場入りだ。今回のメニューは豪勢だ。1.クスコLSDアルファスペック、2.流用4.778ファイナルギアキット、3.アルファ強化デフマウント、4.RIGIDメタルクラッチキット、5.RIGIDアクセルペダル、6.RIGIDジュラコンシフトノブ、である。メインはもちろんLSDだ。これはクスコのMZタイプGをベースにアルファがセッティングしたもので、最近流行のタイプRSではないところがポイント。...らしい。俺も良く知らん。デフマウントは並み居る強豪(?)を抑え、「FD3S強化デフマウント硬度グランプリ(私設)」で見事1位に輝いた製品。ゴムとしては最高の硬度90を誇る。これでダメならもうN規定では対処の方法がない。というか、何だよ硬度90って。本当にゴムなんだろうな?そして今回の目玉はペダル。これはヒール&トーを含むアクセルワークのやりづらさを解消するためにテスト装着する。事前に調べたスペックを見る限り、俺の目的に適合していると思われる。とにかくノーマルペダルだと俺のポジションではかかとがアクセルペダルに届かず、その瞬間に空振りしてしまう(泣)のだよ。シフトノブは言うまでもなく、渋いシフトフィーリングを少しでも良い方向に持っていこうという俺の気持ちの表れだ。できれば功を奏してもらいたい。
 一応、ノーマルのクラッチとデフのままでジムカーナ走行もした。デフはちゃんと効いているし、別にクラッチがパワーに負けて滑るということもない。ただしそれはあくまでも純正16インチタイヤでのお話しだ。俺の予想ではSタイヤに替えた段階で状況は悪化すると見た。Sタイヤの強大なグリップにデフはロック率が下がり、ブースト圧確保のためにコーナー立ち上がりの度に蹴られるクラッチも音を上げるだろう。そうなってからでは遅いのだ。何せ、今年のシーズンはことのほか忙しくなりそうな予感というか予定なのであり、牽引されて工場で修理されている間にも1戦、また1戦と競技会を落としてしまうに違いないからだ。
 そうこう言っている間に、実は防犯対策を施した。セキュリティに関してはこういうところに情報を載せないのが一般的常識らしいが、俺は一般でないから大丈夫。つか、ガラスにフレームナンバーを刻印したのだ。これは「グラスピット」という自動車ガラス専門店の集まり(?)が提供するサービスで、クルマの前後左右4枚のガラスにその車体の番号を入れてくれる。これは消せないもので、例えば車体を盗んでコーションプレートを打ち替えたとしても、4枚のガラスを交換しないと番号が合わなくなる。刻印した車体番号は警視庁のデータベースに保存され、この刻印がある車体が港湾から出荷されそうになると自動的に盗難品として通報されるようになっている。万が一、それでも盗まれた場合は盗難保険が降りる、というサービス。それにステアリングロックを用意した。ステアリングに装着する、ただの鉄の棒だが、何も無いよりは良いだろう。そのほかにも多少の小細工をしているが、全部公開したら意味無いのでここまで。
 閑話休題。駆動系強化作業の完了は1月16日、18日に引き取る予定だ。2月14日に装着後の初走行をして、またインプレッションをお伝えしようと思う。ここまでの累積走行距離、1,582km。

2003.01.18 駆動系強化 作業完了編

 作業が終わった。電車を乗り継いで東浦和へと向かう。日頃、仕事で飛行機だ新幹線だと長距離旅客機関を利用している俺からすると、あっけないほど近い印象だ。ただし、競技会場で壊れたマシンを帰りに預けて帰る気になるかというと、それは難しい。そういうのはまた別の問題だ。
 到着すると担当の人に続いて、おもむろに中村社長が登場。色々な意味でジムカーナ界では有名人だ。どうも時間を合わせて俺を待っていてくれたようで、ファーストインプレッションは好印象。実は直接に顔を合わせて話をするのはこれが初めてなのだ。中村社長の武勇伝(?)から規定の解釈に関する事、車両製作に関するノウハウや公認ジムカーナ界の展望にまで、トピックは多岐に渡った。延々3時間にも及ぶ会談だったが、この会談の内容についてはオフレコとさせてもらう。個人的な事柄も多いしこんなところに公開すべきではないと判断したからだ。悪しからず。もし彼と話をしたかったらアルファに赴くかメールか電話でコンタクトを取ると良い。きっと嫌な顔をすることはない、というより、喜んで相談に乗ってくれると思われる。
 話し込んですっかり暗くなってしまった。ガレージに佇むFDに乗り込みドアを閉め、エンジンを掛ける。キュルルルルルルル・・・ボウーン、ドゴロロロロロロロロ ...うるさい(泣)。デフマウントを交換しただけなのに、なぜかアイドル状態でもエンジンの振動が車内に響き渡っている。マフラーのステーの内1本が、PPFのデフにごく近い部分から出ているのが原因らしい。エンジン>マフラー>PPF>デフマウント&ボディー、と伝わっているのだ。とは、突然背後に現れた中村社長の説明。グローブのない左手に頼りなく軽いジュラコンのシフトノブを引き、リバースで駐車場から出る。俺の努力も空しく、神経質なメタルクラッチがガンワンワンワンワンと激しいスナッチを誘発する。ステアを入れると今度はガタタタタタタタタっと盛大にデフのチャタリング。いやはや、何とも近所迷惑なクルマに変身したものだ。公道に出て信号をくぐっていく。 赤で止められるたびに、次の発進に向けて緊張が走る。大げさではない。ロータリーターボの極細な低速トルクにメタルクラッチとイニシャル16キロの新品デフは、あまりにも凶悪すぎる。クラッチミートの瞬間にそのままゼロまで落ちて眠りに就こうとするタコメーターの針を睨みつけ、反射的にアクセルを煽る。全くノーマルの足の柔らかさも手伝って、アクセルに連動して前後にガクンガクンと大きくピッチング。スナッチなんて生易しいものではない。しかもまともに加速できていないので後ろのクルマが追突せんばかりの勢いで突っ込んでくる。これはまずいと思い、ストールしないように高めの回転数を保ってクラッチを当てると、今度はリアサスを沈めて豪快なロケットスタートを決めてしまう。ドライバーの意志とは全く関係なく、だ。取り敢えず近くのレストランにクルマを突っ込み、腹ごしらえをしてから再挑戦することにした。
 JRの高架を横切って南下する。もうとっくに川口西ICに到着しているはずだが、なぜか全く案内標識が見あたらない。開き直って夜空ナビ(自分で星を見て方角を知り、勝手な思い込みで道を決める手段)を頼りにひたすら南下を続ける。だいぶ慣れてきた。高め、というほどでもない微妙な回転数を保って眺めにクラッチを当てると、比較的スムーズにスタートできることも分かった。完全にエンジンブレーキが掛かっているか、さもなくばちゃんとした加速状態に入っていない限り、デフはどうやってもガコガコと鳴り響くことも分かった。これは特に対策の方法もなさそうなのでいくつかオイルの銘柄を替えて様子を見よう。
 戸田西ICから首都高に乗る。渋滞さえしなければ、高速はゼロスタートがない分だけクラッチワークも楽だ。本来このクルマが持たされるはずだった性能を一部だけでも取り戻したのであろう、軽快かつダイレクトな走りのフィーリング。これに気を良くして遠回り、環状線C1の外回りに合流した。今回の改造で駆動系にノーマルとは段違いのレスポンスを備えたFDは、C1に入ると突如として本領発揮。スパスパと音を立てるかのように切れの良いクラッチは前向きな気持ちのシフトを誘う。あからさまに高いイニシャルトルクを与えられたLSDのお陰で、アクセルオンでは何かに押されたかのように前に出る。これは楽しい。前方がクリアになった時間はわずかだったが、まるで波を越えてゆくイルカのように軽やかなリズム。ブレーキでリアを飛ばせばいくらでも回り込めるし、アクセル一発で瞬時に姿勢も安定する。
 だがどうしても最後のところでミッションが気になる。Gを残してコーナーに入っていくと、2速へのシフトがことごとく失敗する。シンクロがおかしいのか、ただ慣らしが完全でないだけなのか、とにかく入らない。ダブルクラッチを踏んでもガーッとシンクロに弾かれることもある。このままシーズン入りするのも不安なので、あと1ヶ月程度で改善の兆しが見られなければクレーム処理するしかないかも知れない。
 自宅まで帰ってきてR16から細い路地へ折れる。駐車場へ入って車庫入れ。デフは盛大に鳴り響き、クラッチは常にONかOFFかを決めたがっている。隣の車にヒップアタックをかまさないようにガレージに入れるには一苦労だった。本日までの走行は1,685km。

2003.02.09 足回り強化 仕様確定編

 足回りはTEINのジムカーナ競技専用ダンパー「タイプHT」に決めた。以前、ハチロク用のタイプHAが発売になった際にもあちこちで見積もりを取り、購入直前まで行ったのだ。この時は27万円という金額にビビッてしまい、結局はテクノプロスピリッツ製の車高調18万円に落ち着いた。結果的にはそれなりの戦績も残せたし、これはこれで悪くない選択だったと思っている。しかし一度はTEINを使ってみたいと思っていたし、大手メーカーの中でいち早くN規定対応を謳った点にも「やる気」を感じ、今度こそはと導入を決意したのである。当初は2月末発売の予定だったが、取扱店に確認すると多分1月末頃にはデリバリーされそうだ、との回答。それならなお結構だ。価格は260,000円と決して安くはないし、マスターショップでしか扱いがないので値引きもほとんど期待できない。だが初回OH(仕様変更)の費用が含まれていること、ASSYでの供給だからノーマルも丸ごとそっくり手元に残ること、ピギーバッグ(別タンク)付き仕様であること、などを考えるとコストパフォーマンスは悪くない。また、自宅からクルマで30分のところに工場があり、OH時にもゆっくり相談が出来そうだ。
 そうこう言っている内に、Jay氏からオーリンズGETのメールが。新品であれば25万円程度はするはずのものだが、masa氏が使っていた中古品を格安で譲り受けたという。もっともN規定で使おうとすればアッパーマウント・マウントラバー・スプリングシートなど別途52,000円相当の部品が必要になるため、合計すればそれなりの出費には違いない。また、同じFDに乗る何人かの選手がアルファのGABを入れることも耳に入ってきた。GABはハチロク時代に上述の車高調に長いこと使い続けており、性能的には想像が付いて安心だ。こちらも258,000円、余談だがFDの足回りはどこで買ってもこの値段なのだろうか。俺は冗談ではなく、少しでも国内の企業に頑張ってもらいたいとの思いからTEINのHTを待ち続けた。
 ところが1月の半ばを過ぎても一向に入荷するとかしたとかの連絡がない。こちらから問い合わせてみたところ、3月初旬でないとモノが入らなくなった、とのこと。3月1日に入荷すれば2日に交換作業が出来そうだが、もしこれが2日以降の入荷だとしたら9日の千葉戦を落としてしまう。また万が一それが更に半月延び、23日の神奈川戦まで落としたなんて羽目になったら目も当てられない。それに貴重な時間を割いて開催する練習会を走れないのはあまりにも痛い。数日間、俺は悩んだ。
 PCVは「パラレルコンプレッションバルブ」の略で、ピストンに平行して動作する圧側バルブが装備されたもの。ピストン径は46ミリと大きく、単筒式のためオイル容量も多い。そして何より、2輪のレースやヨーロッパのフォーミュラ、WRC等で多数の勝利を収めている。同じ単筒式ガスショックのビルシュタインと比較しても確実に良いとされる性能は本物なのか。
 静岡県は富士市にあるAZUR(アジュール)にクルマを持ち込み、交換作業を依頼した。代表の川村氏がセッティングしたショックはスーパーオーリンズと命名され、現在はオーリンズPCVがベースだ。ノーマルと比較すると前後とも4〜5センチ程度ショートなケースはシャンパンゴールドに塗色され、車高調整用の溝が直に刻まれている。ブルーアルマイトのスプリングシートとロックシートにはスウィフトのサスが乗る。前後ともID65、203mm×16kg/mmだ。アッパー側にはアルファのスプリングシート。新品で用意した純正のアッパーマウントにはこれまたアルファの強化マウントラバー。またしても硬度90度という異色のスペック。車高の設定はノーマル比で前後30ミリダウンが標準ということだったが、タイヤやホイールでこれ以上もう悩みたくないし、再車検(競技終了後に詳しく車両を点検して車両規定に合致していることを確認する制度)で失格になるのも馬鹿馬鹿しい。そこでノーマル比20ミリダウンに仕様変更してもらっておいた。これなら他の参加車両が全てNGでも、これだけは最後の10ミリで車体接触の危険性から逃れられる。しかも街乗りでも気を遣わなくて済む。 (作業完了編へ続く)

2003.02.09 足回り強化 作業完了編

 店内の商品や古い書籍等をパラパラとめくっている内に作業は終わった。セットした状態ではなぜか異様にフロント下がり。現状では純正の前後16インチを履いているが、競技走行ではフロントの方が外径が微妙に大きいタイヤを使用するし、これからサスも馴染むだろうからしばらく走ってみて様子を見ることにする。一般道に出て5秒後、誰でも気付く。「乗り心地が、良い!」。ノーマルからの交換で、F4.8・R3.6kg/mmのバネレートを前後とも16kg/mmにまで上げているのに、である。これは驚いた。噂には聞いていたし、メーカーもショップもそう言ってはいたが、まさか本当にノーマルよりも街乗りが快適になるとは思っていなかった。特に違いが分かるのは路面の継ぎ目や段差を越えた時。これまでは「ドシーン」とハーシュネスが来て、そのあと「ブルルン」と車体全体が震えていた。それが「ドム」くらいで収まってしまう。轍(わだち)の酷い道路を横断するときのように、数センチ上下する入力が連続するところなどではさすがにややノーマルより跳ねる傾向はある。これはサスのレートがそれなりに高いから仕方がないのだろう。気になるのがリバンプ(伸び)側のストローク。セットされた状態でプリロード無し・ヘルパー無しなのだが、これだと自重で下がる量は40ミリに満たない。ホイールストロークにしてF50.4mm(315kg×1.6倍÷16kg/mm×1.6倍)、R38.587mm(315kg×1.4倍÷16kg/mm×1.4倍)だ。Sタイヤを履かせて競技走行をしてみないことには実際のところは分からないが、ひょっとしたらタイトターンでリアがスッポ抜けてしまうかも知れない。もしそうなったらリアのみ12.5kg/mm辺りを試してみようか(計算上は12.348kg/mmでホイールストローク50mm)。
 東名高速に乗って東へひた走る。初期馴染みを考慮して最初は80km/hに抑えた。実に静か、かつ滑らか。タイヤのロードノイズも全体の内、ホイールを伝わって車内に入ってくる分がかなり少なくなっていることに気付く。しっとりと路面を掴むその感触に我慢が出来ず、右足に力を込めてペースアップ。御殿場を過ぎてしばらく、連続した高速コーナーのセクションに差し掛かる。PCVオーリンズのしなやかな減衰特性は、こういう平坦な路面では物凄く高い追従性を見せる。約15×km/hで突っ込んでもただステアを左右に切るだけで何も起こらずに曲がっていく。更にペースを上げていくとターンインで微妙にリアが巻き込む感覚。ハチロクなら次の瞬間にはスピンモードに入る、あの気配だ。反射的にスッとステアを戻す。FDはアウト側へラインを逸れていく。おかしいと思ってもう一度。ステアを切り込みすぎているのかも知れないので、アクセルはパーシャルのまま最小限にステア、フロントからロール、リアのロール直後に巻き込み。フロントがイン側に吸い寄せられるとも言える。そのままでは隣の車線に入ってしまうのでやはり舵角を抜いてカウンター。続いてアンダー目にアウトへ。...これは変だ。ステアに対して面白いようにリアが着いてくるのは確かだが、これでは決して速く走れない。これがリアトーコンロトールの動きなのだろうか?
 高速ワインディングロードが続く。このFDの走行感覚は独特で、一般的な範囲では高速になってもスピード感があまり無い。軽快にオーディオのサウンドが流れる車内に、とても似つかわしくない速度計の表示。それらを聞くでもなく見るでもなく、ひたすら腰に入る入力に集中してステアを切り続ける。登りながらトンネルに入るコーナーで、入口の段差に軽く飛ばされた。テールを安定させようとアクセルを軽く当てたその瞬間、FDはこれまでと違った挙動を見せる。− 前に滑り出る。わずかなプッシングアンダーと回り込むテールとがバランスして旋回をキープしている。シャシーの要求に応えてアクセルを踏み足す。速い。次のコーナーでもテールの動きを待ってアクセルオン。コーナーアウト側の前後輪からゾロリと路面をグリップする感触が伝わってきつつ、ほぼ完全なニュートラルステアのまま旋回できる。小さな路面のうねりやギャップはまるで別のショックアブソーバーが吸収しているかのように、ある一定のところでロール角もビタッと安定している。これがPCVの効果か!あまりにも心地よいコーナリングに思わず、ニヤリと口元が緩む。
 東名横浜ICを降りてまた一般道へ。R16を北上すれば今日のゴールはもうすぐだ。これで318,000円(ノーマルアッパー4輪各約3,000円・RIGID強化マウントブッシュ前後各8,000円・スプリングアッパーシート前後各8,000円含む、工賃・消費税込み)は高いか安いか、競技の結果が出てみないと何とも言えないが、少なくとも一般走行に於いては純正品よりも乗員にも車体にも優しいのは確実だ。オーリンズでの競技走行は14日のコース設定会で初挑戦の予定。今日までの累積走行距離、1,998km。

2003.02.10 時代はETC、なのか?

 突然だが、ETCの車載器を取り付けた。大手の卸元から別の店舗系列に出荷されるはずだった製品が大量に受注残を抱え、俺がいつも行っているショップに格安で入荷していたのだ。カルソニックカンセイという聞き慣れないメーカーのETC−0012というこれまた聞き慣れないモデルで、アンテナ一体式のカード全挿入型。ぼってりとした野暮ったいデザインではあるが、通常は液晶のところをFL管を使った明るいインジケータと音声案内用のスピーカ、更に20件までの履歴メモリー機能まで搭載した高級品。定価は38,000円である。ヤケに定価が高いような気がするが、元々これは日産車の純正オプションだからであろう。
 俺が調べた範囲だと、通販で24,000円、店頭販売でおおよそ28,000円程度の製品だが、これを9,800円でゲットした。どこで買ったか、俺に聞かれても困る。というのはもうとっくに入荷した全てが売り切れているし、次回入荷の予定などもないからである。ちなみに俺の意見ではこういうものは音声ガイド機能付きに限る。前を見たまま運転したいから装着するのに、それを見なければならないのでは意味がないのである。カーナビも然り、画面を凝視していて渋滞の末尾に突っ込んだという話では洒落にならない。だったら止まって地図を見れば良い。
 閑話休題。装着が終わり、おもむろにイグニションをオンにする。ピピッとブザーが鳴って「CARD」の表示。しばらくすると消えた。エンジンを始動・暖機して、早速高速に乗ってみる。[ETC/一般]の表示のあるゲートに入るとブブッと鳴って「NG」の表示。窓を開けておじさんから通行券を受け取り、パワーウィンドウは加速しながら窓を閉めるのが簡単で良いな、それよりもETC車載器は「NG」であることが分かってとても便利だ、などと思いつつ ...というところで目が覚めた。つまりまだカードがないのだ。色々と特典の付いたカードは多種多様にリリースされているが、どれも年会費が掛かるのが納得できない。利用者がカードを使って支払いをすれば必ずマージンが入るのに、使わない場合でも金を寄こせと言う。何もサービスを受けていないのに、その「無」への対価を支払わされる、これほど恐ろしいものはない。使っていなくても、緊急時に無料で相談できる電話窓口や店舗ごとの特典などにコストが掛かっている、とカード会社は言うかも知れない。だがサービス商品は受益者コスト負担が基本だろう。ましてやクレジットカードであれば、口座から代金を引き落とす権利を有しているのだから、後でちゃんと請求も出来る。
 と憤慨しながらも探していたら、ついに年会費永久無料のカードを見付けた。LIFEのマスターカードである。元々は大手信販会社のライフだが、平成13年3月に買収されて株式会社アイフルの連結子会社となっている。ま、そんなことは構うまい。ETCカードは親カードとは別に専用のものが貸与されるタイプで、この親カードもろとも年会費は永久に無料。
 次にコスモ・ザ・カード。これはG−Mile(ガソリンマイル)が1マイル貯まると、スタンドでの給油1リッターに対して10円キャッシュバックされるというもの。これはコスモのスタンドでしか使えない代わりに年会費も500円と格安。毎年50マイル(正確には消費税分も入れて53マイル)を貯めること、その分(=53リッター以上)をコスモのGSで給油すること、が出来れば実質年会費は無料である。ちなみに初年度の年会費は無料で、今なら100マイル(=1,000円相当)が入会時にプレゼントされる。
 あとは大金を使えばそれなりに特典があるが、使わなければ年会費の分だけ損をするというものがほとんど。ETCを使うかどうかまだ分からない貴方も、上記2種のカードに関しては今すぐに申し込んでおくのが得策だ。なぜなら上記特典は平成15年3月いっぱいで終了してしまうからである。あぁ、何て役に立つんだろう、俺のコラムって(笑)。今日は全然走っていないので走行距離は変わらず。

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